平成29年7月12日、群馬大学医学部臨床大講堂で前橋支部総会と講演会が開催されました。午後3時半ごろから雷雨にみまわれ、市内の国道17号が冠水しました。山田邦子先生が支部長のあいさつの中で『前橋支部はいつもその時期にあった講演会を開いており、昨年は田村遵一病院長に【群馬大学医学部附属病院の現状と展望】と題してご講演いただきました。今年は群馬大学医学部附属病院救命救急センター長である大嶋清宏先生に【救命救急センターの現状と展望】と題してご講演いただきます。』とお話しされましたが、昨年より明るく感じられました。群馬大学大学院医学系研究科救急医学分野教授 大嶋清宏先生のご講演ですが、今年も白倉賢二先生が座長を務められました。大嶋先生は、平成4年卒業で伊勢崎の出身で、全身を診ることができる医者になりたいとの思いから、内分泌・消化器・胸部外科がある第2外科に入局され、外科から集中治療、救急と道を進んできたそうです。2010年7月に42歳で現職に就任され、7年経過し現在49歳です。『大学病院で救急をやるというのは先輩方にはあまりイメージがないかと思われます。就任当初はなかなか難しい現状があったのですが、今どうなっているかお話したい。』と講演が始まりました。『群大病院って救急とっているの?』とよく言われるそうですが、群大に救急車がきた時の入り口から始まり救急救命センターの内部についてスライドで提示されました。CT撮影室、手術室があり、同時に8例に対応できるそうです。救急科の医師は現在7名、他に2名自治医大出身者(長野原に)と埼玉日赤で研修中の方がいます。7年前着任した頃は、他科の先生にも救急の当直をしてもらっていましたが、現在はすべて救急科で対応するようになっています。平成27年4月からは前橋市の2次救急輪番にも群大病院が入りました。昨年の4月に救急の実績が県に認められ、救命救急センターに指定されました。1日のスケジュールは、朝8時日勤者が集まり当直との打ち合わせで始まります。月曜日に教授回診と感染制御部や総合診療部の先生も加わり全体のカンファレンスがあります。毎週水曜日には入院患者さんに対するカンファレンスを、看護師、ソーシャルワーカー、リハビリのDr、薬剤部などの多職種で行います。救急病棟は現在14床あります。着任時は7床でしたが、今年度中に16床になる予定とのこと。救命救急センターになるには20床以上必要ですがICUとあわせて申請して県に認めてもらっているそうです。夕方になると5時ごろ集合し状況を確認し、特に問題なければ夜勤以外は帰る、週末は日勤夜勤の2交代制でやっています。群大救急外来の総受診者数は年間9000名で、救急車の受け入れ件数は3800件(今年は4000件ぐらいに)、救急科入院患者数は630名で平均在院日数は1週間から10日間だそうです。疾患的には、脳、心血管、呼吸器、消化器、泌尿器科疾患などで、最近では形成外科、皮膚科と熱傷チーム組んで全身管理の必要な重症熱傷も診ているそうです。630名の入院患者中死亡退院は5.8%、心肺停止は年間100名強で自己心拍再開が2割、退院7.8%(全国的にも8%ぐらい)だそうです。医師7名中5名がDMAT隊員で、残り2名も群馬DMATの研修を受けています。昨年の熊本震災にもDMATチーム(医師1名と多職種で6名)を病院の救急車で陸路派遣しました。日本救急医学会では人口100万人あたり142名救急医が必要とされており、群馬県は人口200万人なので284名の救急科専門医が必要となります。現在、日本救急学会認定の救急科専門医は群馬県では39名しかいません。『なぜ救急医療をさけるのか、専門分化が一つの要因になっているのではないか』と言われました。専門医なら専門外の病気を診なくてよい、リスクを考え診ないほうがよいという風潮になっているのでは、と。目の前の患者さんが呼吸循環など全身状態を管理安定化させながら鑑別診断を行ことが重要で、救急科としてもGENERALISTの養成という役割を痛感しているそうです。8年目を迎えるご自身が若い人に言っていることは、『我々が目指す救急医として:救急患者の初療を担う救急総合医的な役割と、重症患者管理を担う集中治療を基礎とし、救急医療のプロフェッショナルとして地域医療に貢献する。日々の診療の蓄積からエビデンスを導き出し。国内外に発信する。』で、若い救急医を育て、全県の2次医療圏基幹病院に大学から救急科専門医を派遣できるような体制にしたい、という野望を持っているそうです。『専門医や他職種の人たちといい気分で仕事ができるようにBe niceと』とおっしゃり、大嶋先生の講演が終わりました。会場全体が大きな期待感に包まれたように感じました。講演会後、イタリアンレストラン・チネマで懇親会が開かれました。大竹誼長先生の乾杯の言が『Be nice.』でした。

 







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